価格もサービス内容も同じ訪問介護で、差別化はどこでするのか
事業所経営訪問介護の差別化は、非常に難しいと思います。価格は国が決めていて一律、サービスの内容も基本的には同じ。では、どこで違いをつくればいいのか。マーケティングの4Pで整理すると、訪問介護が力を入れられるところは、実はほとんど残っていません。
訪問介護の差別化は、なぜ難しいのか
訪問介護の差別化は、非常に難しいと思います。
価格は国が決めているので一律です。サービスの内容も、基本的にはどの事業所も同じです。そうなると、どこで差別化をすればいいのでしょうか。
コンビニには「色」がある
たとえばコンビニを思い浮かべてください。同じコンビニでも、ブランドによって違いがあります。
- ファミリーマートなら、「ファミチキ」などのホットスナック
- ローソンなら、デザート
- セブン-イレブンは、何でもそろう万能タイプ
どこも同じように見えて、それぞれが「うちはここで選ばれる」という強みを持っています。
ところが訪問介護では、やることは基本的に同じです。むしろ、同じでなければいけません。事業所によって身体介護1や身体介護2の中身が変わるわけではないからです。
マーケティングの4Pで考えてみる
このことは、マーケティングの「4P」で考えると分かりやすくなります。
- Place(場所):事業所の場所や、サービスを提供する地域は、簡単には変えられません。
- Price(価格):介護報酬で一律に決まっているので、変えられません。ただし、唯一動かせるのが特定事業所加算です。
- Product(商品):身体介護、生活援助といったサービスの種類や内容は、事業所ごとに変えられるものではありません。
- Promotion(販促):ここだけは、やり方がいくつもあります。
つまり、訪問介護が自分たちの工夫で力を入れられるところは、プロモーションしか残っていないのです。
違いをつくれるのは、サービスの「質」
では、何をプロモーションするのか。
サービスの種類は変えられません。ですが、同じ身体介護でも、質は事業所によってまったく違います。
- ヘルパーが利用者の状態をよく理解していて、変化にすぐ気づく
- 担当が替わっても、同じ水準のケアが受けられる
- ケアマネジャーへの報告が早く、正確
- 職員が定着していて、なじみの顔が来てくれる
私は、このサービスの質こそが、差別化の第一歩だと考えています。
AIやロボットの時代が来ても
おそらく数十年先には、自律型のロボットが介護をしている未来もあると思います。ですが、それでも「人にやってもらいたい」という人は一定数いるはずです。
手を握ってもらったときの温かさ。名前を呼んで、目を見て話しかけてもらえる安心感。「今日は顔色がいいですね」と、いつもと違う小さな変化に気づいてもらえること。こうした人のぬくもりは、どれだけ技術が進んでも、ロボットには置き換えられないものです。
そうなったとき、選ばれるのは「人だからこそできるケア」を提供できる事業所です。サービスの質を高めることは、これからの時代にも対応できる唯一の方法だと思っています。そして、その未来はそう遠くありません。
いいことをしていても、伝わらなければ意味がない
ただ、どんなに事業所の中でいい取り組みをしていても、それを伝える方法がなければ、外からは分かりません。
そこで必要になるのが、ホームページやSNSです。特に訪問介護では、ホームページが有効な手段のひとつです。
- 利用者やご家族が、事業所を探すときに検索する
- ケアマネジャーが、依頼先を検討するときに確認する
- 求職者が、応募する前に必ず見る
実際に、弊社が制作をお手伝いしたお客様の事業所のホームページは、公開から半年もたたずにGoogle検索で1ページ目に表示されるようになりました。そこから、利用者の問い合わせや採用につながっています。
介護のホームページは、なぜ少なく、質が低いのか
ところが実態として、ホームページを作っている訪問介護事業所はほとんどありません。作っていたとしても、正直に言って、クオリティが非常に低いものが多いのが現状です。
理由のひとつは、ホームページの制作会社が介護のことを知らないまま作っているからです。
- 特定事業所加算が何を意味するのか、分からない
- ケアマネジャーが何を見て事業所を選ぶのか、分からない
- ヘルパーの求職者が何を気にしているのか、分からない
これでは、見た目はきれいでも、実態に合ったホームページは作れません。ここが、介護事業の発展が進まない要因のひとつにもなっていると思います。
介護に詳しい専門家が、ほとんどいない理由
ホームページに限らず、介護に詳しい専門家は実際にはほとんどいません。
理由は簡単です。ほかの業界と比べて、利益率が低いからです。
厚生労働省の調査では、訪問介護の平均の収支差率は9.6%と出ていますが、その一方で約3分の1の事業所が赤字です(令和6年度決算)。しかも事業所の多くは小規模で、外部のサービスにかけられる予算は限られています。
そうなると、介護事業者に向けてサービスを提供しようという会社も、なかなか参入してきません。結果として、介護のことを分かっていない会社が、介護のホームページや仕組みを作ることになるのです。
まず、何から始めればいいか
1. 自分の事業所の「質」を言葉にする
研修の仕組み、職員の定着率、ケアマネジャーへの報告の速さ、対応できる医療的ケア。「うちはここが違う」と言えることを書き出してください。言葉にできないものは、伝えられません。
2. 特定事業所加算を、質の証明として使う
特定事業所加算は、研修・会議・指示と報告などの体制が整っていることの証明でもあります。算定しているなら、それを「何をしている事業所なのか」とあわせて伝えてください。
3. ホームページで、誰に何を伝えるかを決める
利用者・ご家族、ケアマネジャー、求職者。誰に向けて、何を伝えるのかを決めてから作ります。見た目より先に、中身です。
よくある質問
ホームページがなくても、ケアマネジャーからの紹介で利用者は来ています。
紹介が続いているのは、それ自体が質の証明です。ただ、紹介してくれるケアマネジャーが異動や退職をすれば、紹介は止まります。ホームページは、紹介以外の入口をつくることと、採用の両方に効きます。
SNSとホームページ、どちらから始めるべきですか?
訪問介護なら、まずはホームページです。利用者のご家族やケアマネジャー、求職者が確認するのは、多くの場合ホームページだからです。SNSは、発信を続けられる体制ができてからで十分です。
特定事業所加算を取ると、利用者負担が増えて選ばれにくくなりませんか?
負担が増えるのは事実なので、説明は欠かせません。そのうえで、体制が整っていることを分かりやすく伝えられれば、加算は「選ばれる理由」になります。
まとめ
価格もサービスの種類も同じ訪問介護で、違いをつくれるのはサービスの質です。そして、その質を価格に反映できるのが特定事業所加算、その質を伝えられるのがプロモーションです。いいことをしているのに伝えていない事業所は、それだけで選ばれる機会を逃しています。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」
訪問介護の収支差率(令和6年度決算)9.6%、収支差率が0%未満の事業所 35.9%(税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない)
自分の事業所は大丈夫?
無料の運営指導リスクチェック
書類と運用を確認し、返還につながる不備がないかをお伝えします。

