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事業所経営2026.10.26約7分で読めます

訪問介護の事業承継、なぜ「売れにくい」のか。企業価値を高める仕組み化とは

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介護加算研究所® 編集部(監修:佐々木 実)株式会社KKLABO 代表取締役/全国1,000事業所以上を支援

介護保険制度が始まった2000年から事業所を続けてきた代表の多くが、いま70代・80代を迎えています。跡継ぎがいないとき、M&Aは有力な選択肢です。ただ、訪問介護は施設系に比べて売れにくいのが現状です。その理由と、今から企業価値を高めるためにできることをまとめます。

いま、多くの事業所が直面している「跡継ぎ問題」

私はこれまで、1,000以上の訪問介護事業所を支援してきました。そのなかには、2000年に介護保険制度が始まった当初から事業所を続けてこられた法人も多くあります。

当時40代・50代で事業を立ち上げた代表は、いま70代から80代です。こうした事業所で、いちばん多いお悩みが跡継ぎです。

  • 子どもが法人を継ぐケースは、実際にはまれ
  • 職員のなかに、経営を引き継げる人がいない
  • 結果として、利用者と職員がいるのに事業所を閉じることになる

長年地域を支えてきた事業所が、後継者がいないという理由だけで閉じてしまうのは、利用者にとっても職員にとっても大きな損失です。

選択肢として増えているM&A。でも、訪問介護は売れにくい

そこで最近増えているのが、M&A(事業の売却・譲渡)による承継です。ただ、同じ介護事業でも、売れやすさには差があります。

  • 施設系(有料老人ホーム、グループホームなど):比較的売れやすい
  • 訪問介護:買い手がつきにくい、または価格がつきにくい

なぜだと思いますか。

答え訪問介護は、「仕組み」ができていない事業所が多いからです。経営や運用が特定の人に頼っている(属人化している)と、その人がいなくなった後も同じように回るとは、買い手には判断できません。そのため企業価値が低く見られやすくなります。

施設には建物や設備という目に見える資産があります。一方、訪問介護の価値は「人」と「運用」そのものです。だからこそ、その運用が人に依存せず回る状態になっているかが、価値を大きく左右します。

企業価値を高める3つのポイント

1. 処遇改善加算を、上位区分で取得している

処遇改善加算は、職員の賃金に直結する加算です。上位区分を取得し、要件を満たした運用ができていることは、職員が定着しやすい事業所であることの裏付けになります。買い手にとっては、承継後に職員が辞めてしまうリスクが低い事業所に見えます。

2. 特定事業所加算を取得している

特定事業所加算は、区分によって基本報酬に最大20%上乗せできる加算です。同じ利用者・同じサービス量でも売上が変わるので、それだけでも企業価値へのインパクトは大きくなります。

3. 加算の運用が「仕組み」になっている

ここが最も大切なポイントです。加算を取っていても、その運用方法をサービス提供責任者だけが知っている状態では、その人が辞めた時点で運用が止まり、返還のリスクまで抱えることになります。

買い手が見るのは「加算を取っているか」だけではありません。「誰が担当しても、要件を満たした運用が続くか」です。

「誰が運用しても回る仕組み」とは

具体的には、次のような状態です。

  1. 書類の保管場所とルールが決まっている(どこに何があるか、誰が見ても分かる)
  2. 研修・会議・健康診断などの年間予定が決まっている(担当者が替わっても実施が止まらない)
  3. 指示・報告の残し方が統一されている(サービスごとに、毎回同じ形で残る)
  4. 毎月の点検が習慣になっている(抜けを、その月のうちに見つけられる)
  5. 手順が文書になっている(ノウハウが人ではなく、事業所に残っている)
ポイントこの状態は、売却のためだけのものではありません。職員の負担が減り、運営指導にも落ち着いて対応できるようになります。売るかどうかを決める前から整えておく価値があります。

仕組み化の方法は、規模によって変わります

  • 社内で手順書をつくる:担当者の頭の中にある手順を、文書にする
  • 記録をクラウドで管理する:書類の場所と更新状況を、誰でも確認できるようにする
  • 専門の外部サービスに任せる:加算の運用や書類の点検を外部に委託し、職員が替わっても運用が止まらないようにする

どの方法でも大切なのは、ノウハウが人や外注先ではなく、事業所に残ることです。外部に任せる場合も、手順や記録は事業所のものとして手元に残る形にしておきましょう。

よくある質問

まだ売却を決めていなくても、準備したほうがいいですか?

はい。仕組み化には時間がかかります。承継の方法を決める前から整えておくと、親族承継・社内承継・M&Aのどれを選んでも有利に進められます。

加算を取っていない事業所は、M&Aでは不利ですか?

不利になりやすいですが、今から取得して運用実績を積むことで、評価は変えられます。取得後すぐではなく、一定期間きちんと運用できている実績が大切です。

仕組み化は、何から始めればいいですか?

まずは「担当者が明日いなくなったら、何が止まるか」を書き出してみてください。止まるものが、仕組みにすべき業務です。

まとめ

訪問介護の企業価値は、建物ではなく「運用」にあります。加算を取ることに加えて、その運用を誰がやっても回る仕組みにしておくことが、事業所を次の世代へつなぐための一番の準備です。

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