「人が辞めたら採用する」の前に。離職が続く事業所で売上が伸びない理由
人材育成職員の退職は、どの事業所も一度は必ず悩む問題です。人が辞めると「すぐに採用を」と考えがちですが、本当に力を入れるべきなのは採用よりも定着です。離職が売上に与える影響と、今日からできる離職防止の進め方をまとめます。
「人が辞めるので、求人文を書いてほしい」
私が事業所の代表からよく受ける相談のひとつが、人材についてです。なかでも多いのが、「人が辞めるので新しい人を採用したい。求人の文章を書いてほしい」というご依頼です。
もちろん、ご依頼があれば求人の文章をつくります。ただ、本質的なお話をすると、力を入れるべきなのは採用よりも、離職を防ぐことです。
どれだけ採用しても、ざるのように人が辞めていく状態では、採用にかけた時間もお金も残りません。
離職が続く事業所で、売上が伸びている事業所はない
これまで多くの事業所を見てきて、断言できることがあります。離職が続いている、または離職が多い事業所で、売上が伸びている事業所はありません。
訪問介護の売上は「ヘルパーの人数 × 稼働時間」で決まります。人が辞めるたびに、次のようなことが起こります。
- 担当していた利用者の訪問を、ほかの職員で埋める必要がある
- 埋められない分は、新規の依頼を断ることになる
- 残った職員の負担が増え、次の退職につながる
- 求人広告や面接、同行訪問など、採用と育成のコストが毎回かかる
焦って採用すると、かえって人が辞める
人が辞めると、早く穴を埋めなければと焦ります。その結果、本来はその事業所に合わない人を採用してしまうことがよくあります。
でも、よく考えてみてください。人を採用しなければ、確かに売上は増えません。ですが、今いる職員が辞めなければ、売上が減ることもありません。
合わない人を採用すると、指導する職員の負担が増え、チームの雰囲気が崩れ、今まで頑張ってくれていた職員まで辞めてしまう。こうした悪循環は、決して珍しくありません。
離職を防ぐために、今日からできること
1. 退職の理由を、記録に残す
まずは、これまでに辞めた職員の退職理由を書き出してみてください。介護の仕事を辞めた理由としては、職場の人間関係や、仕事の負担、将来への不安が上位に挙がります。自分の事業所では何が多いのかが分かれば、手を打つ順番が決まります。
2. 入職後3か月を、一人にしない
訪問介護は一人で訪問する仕事です。慣れないうちに一人で訪問に出て、困ったときに相談できる相手がいないと、不安が積み重なって早期の退職につながります。同行訪問の回数や、困ったときの連絡方法を決めておきます。
3. 定期的に面談する
辞める人の多くは、辞める前に何らかのサインを出しています。月に1回、15分でも面談の時間をとり、困りごとや負担を聞くだけで、退職を防げることがあります。
4. 一人ひとりの成長の道筋を示す
「この事業所にいると、自分は何ができるようになるのか」が見えないと、職員は将来に不安を感じます。個別の研修計画を立て、目標と研修の内容を職員ごとに決めておくと、成長の実感につながります。
採用するときに決めておきたいこと
もちろん、採用が必要な場面もあります。そのときは、焦って決める前に「どんな人なら、この事業所で長く働けるか」を先に決めておきます。
- 事業所が大切にしていること(利用者への接し方、チームでの働き方など)
- 最低限ゆずれない条件(勤務できる時間帯、移動手段など)
- 入職後の育て方(誰が、どのくらいの期間、同行するか)
この3つを決めておくと、面接で判断に迷いにくくなり、求人の文章にも事業所らしさが出ます。
よくある質問
人手が足りず、採用を待てない場合はどうすればいいですか?
採用を止める必要はありません。ただ、採用と同時に、今いる職員の負担を減らすことを考えてください。事務作業や書類の点検など、訪問以外の業務を見直すだけでも、職員の負担は軽くなります。
給与を上げれば、離職は防げますか?
給与は大切な要素ですが、それだけでは防げません。人間関係や相談できる環境、成長の実感がそろって初めて、長く働きたいと思える職場になります。処遇改善加算を上位区分で取得し、賃金の改善とあわせて取り組むのが効果的です。
離職率は、どのくらいなら問題ないですか?
数字の基準よりも、まずは自分の事業所の離職の推移を把握することが大切です。年に何人辞めているか、入職から何か月で辞めているかを記録してみてください。
まとめ
人が辞めたら採用する、を繰り返しても、事業所は強くなりません。売上を伸ばしている事業所は、例外なく人が定着しています。採用に力を入れる前に、今いる職員が長く働ける仕組みを整えることが、事業所を伸ばす一番の近道です。
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