「属人化はダメ」は本当か。訪問介護で、属人化すべきところと仕組み化すべきところ
事業所経営「属人化をなくせ」と口うるさく言う経営者は多くいます。ですが、私はそうは思いません。訪問介護には、属人化しなければいけないところと、属人化してはいけないところがあります。大切なのは、その切り分けです。
「属人化はダメ」は、本当か
訪問介護は、ものすごく属人化の多い事業だと思っています。
世の中には「属人化をなくせ」「仕組み化しろ」と口うるさく言う経営者がいます。ですが、私はそうは思いません。
大切なのは、属人化しなければいけないところと、属人化してはいけないところを切り分けて考えることです。すべてを仕組みにすればいいわけでも、すべてを人に任せればいいわけでもありません。
まず、仕事を切り分けてみる
訪問介護の仕事を、職種ごとに切り分けてみると分かりやすくなります。
ヘルパーの仕事
- サービスの提供
- 記録を書くこと
サービス提供責任者の仕事
- 訪問介護計画の作成
- ケアマネジャーとの連絡・調整
- 利用者の状態の把握と対応
- ヘルパーへの指示、教育・研修
管理者の仕事
管理者の役割は、国の運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第28条)に定められています。
- 事業所の従業者と業務の管理を、一元的に行うこと
- 従業者に運営基準を守らせるため、必要な指揮命令を行うこと
つまり管理者は、職員の勤務や配置、事業所の運営が基準どおりに行われているかを含め、事業所全体に責任を持つ立場です。
仕組み化すべきところ:記録と申し送り
介護記録
介護記録を、いまだに紙で書いている事業所は少なくありません。
記録は、利用者が増えれば増えるほど、比例して量が増えます。紙の記録を集め、確認し、ファイルに綴じる作業も同じように増えていきます。ここは人の頑張りでカバーするところではありません。介護ソフトを使って、仕組みにするべきところです。
直行直帰で、報連相が減っている
いまの訪問介護は、直行直帰が当たり前です。昔のように、サービスが終わったら一度事業所に戻る、ということはほとんどありません。
そうなると、「今日こんなことがあった」「あの利用者さん、少し様子が違った」といった報連相が、一昔前と比べて圧倒的に少なくなっています。
この申し送りこそ、介護ソフトを使って、確実にサ責に届く仕組みにしておくべきところです。ヘルパーが気づいたことを、その日のうちに、決まった形で残す。伝え忘れや聞き漏らしを、人の記憶に頼らないようにします。
属人化すべきところ:コミュニケーション
一方で、仕組みにしてはいけないところがあります。
サ責が、ヘルパーからの報告や利用者のADL(日常生活動作)の変化を見て、気になることがあったとします。そのときは、ヘルパーに直接連絡をしてみる。電話でもいいので、声を聞いて話す。
- 「報告にあった件、そのときどんな様子でしたか」
- 「最近、何か困っていることはありませんか」
- 「いつもよく見てくれていて、助かっています」
ここが、属人化しなければいけないところです。
すべてのやり取りをソフトの上だけで済ませる。これは間違いです。文字だけでは、ヘルパーの迷いや不安は伝わってきませんし、サ責の感謝も伝わりません。
逆に言えば、このコミュニケーション以外のところは、ほとんど仕組み化できるということです。仕組みにできるところを仕組みにするのは、人と向き合う時間をつくるためです。
特定事業所加算は、ほとんど仕組みでカバーできる
皆さんの事業所はどうでしょうか。属人化と仕組み化を、きちんと切り分けられているでしょうか。
たとえば特定事業所加算。ここは、ほとんどが仕組み化でカバーできるところです。
- 研修や会議の年間予定と、実施の記録
- サービスごとの指示と報告の記録
- 健康診断の実施状況
- 人材要件の割合の計算と、その記録
どれも、毎月決まったことを、決まった形で回し、記録に残す作業です。
むしろ、ここを仕組みにできていないと、担当者が忙しくなった月や辞めた月に、体制要件や人材要件が満たせなくなります。そうなれば、返還の対象になり得る事業所になってしまいます。
加算は、取る前に「維持できるか」を考える
加算を取ることは大切です。ですが、まずは取れる体制があるか、そしてそれを維持できる仕組みがあるかを考えてから取る。これも一つの方法です。
取ったあとに要件を維持できず返還になるくらいなら、仕組みを整えてから取るほうが、結果的に事業所を守ります。
よくある質問
介護ソフトを入れれば、仕組み化はできますか?
ソフトは道具です。誰が、いつ、何を入力し、誰が確認するのかというルールを決めて初めて仕組みになります。ルールがないまま導入すると、紙がソフトに置き換わっただけで終わります。
ヘルパーが高齢で、ソフトの入力を嫌がります。
最初から全部を入力してもらう必要はありません。まずは申し送りだけ、選択式の項目だけ、と範囲を絞って始めると定着しやすくなります。
サ責が忙しくて、ヘルパーに電話する時間がありません。
それこそが、仕組み化が足りていないサインです。書類や記録の確認など、サ責でなくてもできる業務を仕組みにして、電話する時間をつくってください。
まとめ
属人化は、すべてが悪いわけではありません。記録や申し送り、加算の書類のように、量が増えるほど負担が増えるところは仕組みにする。ヘルパーや利用者と向き合うコミュニケーションは、人がやる。この切り分けができている事業所は、職員が定着し、加算も安定して維持できます。
加算の取得や運用で困っている事業所があれば、ぜひ一度ご相談ください。
参考資料
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